エッセイ

秋川雅史の彫刻鑑定 その7

2021年11月09日

 
④「オークションでは石川光明作としてではなく、“伝石川光明”として出品されているので、オークション会社自体も本物かどうかは分からないという事で出品している。」

 
そして最後に注目をしたのはこの点である。
私は番組収録中で評価額が出る前に「これがもし偽物だったらオークション会社の立場はまずいですよね」と言った。それに対して大熊氏は「この作品は本物として出品しているのではなく、伝石川光明として出品をしているので問題はないです」と言った。
伝石川光明というのは、保有していた人(出品者)が「昔からこれは石川光明が作ったものだと言い伝えられて受け継いできたものです」という物で、鑑定を行い真作と判断したものではないという意味である。
そもそも大手のオークション会社というのは、基本的には本物と会社が判断をしたものしか出品をしない。
最終的な責任は買う側にあるが、大手のオークション会社は「これは石川光明が作ったと伝えられてきたものです」という理由だけで出品をする事はあり得ない。必ず作品を見て事前鑑定を行ってから、会社として真作と判定したものしか出品をしないものなのである。
 
そこで私はこの作品を購入したオークション会社に問い合わせをしてみた。すると以下の答えが返ってきた。
 
「当時の社内鑑定につきましても十分検討し社外の方にもご意見を伺いながらと慎重に出品へと進めた経緯がございます。
またオークションでの下見会から実際に競りにご参加された方々を見ても秋川様のように彫刻の造詣に深い方たちでしたことも含めて、当社の見解としてはこれまでと変わらず石川光明の作であると思っています。
秋川様がもし作品を手放されるようなことがあっても当社としては自信を持って真作としての出品を承ります。
公式鑑定人が存在しないので大熊敏之氏のような反対意見もありえるかとは思いますが、影響力のある公共のテレビという場での公表は誠に遺憾です。」

 


 

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